2018.6.16

ARAKAWA DESIGN CREATIVE JAM

ARCHIVE #16

2018年6月16日のADCJ第16回は、ゲストに原型師の山口範友樹さんをお呼びして、原型師とは?という話から、製作の現場のお話、今後の展開の話と盛り上がりました!

MC  時刻は午後7時になりました。毎月第1、第3土曜日のこの時間は、荒川デザイン・クリエイティブジャムをお送りしています。そして、今週はゲストトークの週になります。この番組は、株式会社アンノウと、株式会社ツインズの提供でお送りいたします。
荒川  こんばんはー。荒川デザインの荒川サトシです。そして、中村さん、尚ちゃん(川口)よろしくお願いします。
MC・川口  お願いしまーす。
荒川  始めにこの番組の説明をします。荒川デザイン・クリエイティブジャムでは、「クリエイティブを声で届ける」をテーマに日々様々な表現をしてらっしゃるゲストさんをお呼びしてデザイナー視点でトークをするトーク回と、「観た人もまた観たくなる」をテーマに、映画作品を独自の視点で語る「傍らに映画を」の2本柱で毎月2回やっています。今回は第3土曜日なので、ゲスト回。番組中にメッセージを募集しています。ミヤラジアプリか、Eメール773@miyaradi.com、そして今回からはツイッターのハッシュタグを使ったメッセージも募集していますので、気軽に#ADCJでメッセージをつぶやいてもらえるとピックアップします。オリジナルステッカーのプレゼントキャンペーンもやってますのでぜひつぶやいてください。

荒川  今回のゲストをご紹介します。原型師の山口範友樹さんにお越しいただきました。こんばんは。
一同  (拍手)
山口  どうもこんばんはー。山口範友樹です。よろしくお願いします。
荒川  わざわざ、東京の二子玉からご足労いただきありがとうございます。まず紹介をさせていただきます。
川口  はい。本日のゲスト、山口さんのご紹介をさせていただきます。株式会社アートプレスト内の造形室ZERO STUDIOで、原型師をされている山口範友樹さんです。山口さんは、大学卒業後、造型師 澤田啓介氏に師事され、造型・原型制作、造型に対する考え方などを学ばれました。フィギュア原型の仕事の他、CDジャケット等の撮影用立体物などを制作し、様々な経験と6年間の修行の後、2008年より株式会社MEDICOM TOY(メディコムトイ)の造型部にご勤務されます。その後、 2012年に バンダイナムコグループの株式会社アートプレスト内に造形室を設立。今年、2018年4月より造形室の業務拡張を目的にフィギュア原型制作を主軸とした、デザイン・企画・撮影 などを手がけるチーム「ZERO STUDIO」を新設され、現在に至ります。ZERO STUDIOは、山口さんを中心に、高橋晋太郎さん・洲崎紘子さん・川崎佑真さんの4名で結成されているクリエイティブチームで、今後は世界に向けての活動の展開も予定されていらっしゃいます。また、山口さんは、業界屈指の造形師たちが腕を競い合う、バンプレストフィギュアコロシアムの「造形王頂上決戦」という大会型イベントで、2014年「造形王 頂上決戦Ⅳ」優勝、2015年「裏造形王 頂上決戦」でも優勝、2015年「造形王 頂上決戦Ⅴ」優勝、そして2017年「造形王世界大会」でも優勝という大変すばらしい数々の輝かしい成績も納められています。まさに日本でトップレベルの実力を持っていらっしゃる原型師。そんな山口範友樹さんが今日のゲストです。どうぞよろしくお願いいたします。
一同  おおー!すばらしい!(拍手)
山口  大層な紹介、すみませんー。(笑)
荒川  すばらしい!全部優勝ですよね。すごいです。造形王っていうのも素晴らしいんですけど、世界の大会でも…。
山口  そうなんですよ。勝たせてもらいました。(笑)
荒川  もっとオリンピックの種目になってもいいぐらいですよね。
山口  でも、フィギュア世界一っていったら羽生結弦か俺かどっちのフィギュアか!?ってなりますよね。
MC  あー!上手いなぁ!

荒川  まず、そもそも原型師っていう職業が、どういうものなのか説明したほうがいいですよね?
山口  何か、荒川くんのラジオは(ゲストで)デザイナーさんとか色々来てもらってると思うんですけど、俺の場合は職人に近いかなと思ってるんです。メーカーさんからイラストをもらって、そのイラストを立体にする仕事。簡単に言うとおもちゃ屋さんとかゲームセンターに置いてあるフィギュアの大もとを粘土とかで作るような仕事ですよね。アニメのキャラクターとか平面のイラスト、それを絵だけもらったのを立体にしなきゃいけない。
MC  へぇーそうですか!3Dに変換するんですね。
山口  その立体にしたものをおもちゃメーカーさんとかが生産するんですね。まぁ大体中国とかで生産することが多いんですけど。僕たちが作った1個の原型を工場で数万個にしておもちゃとして販売する。その元々の1個の原型と、それに対して彩色(色塗られたもの)も自分達でやって、塗ったものと、原型を工場に入れると、工場が金型とかを作り、僕たちが作った色を見本に色をつけて、それをパッケージングして、日本や海外でおもちゃ、フィギュアとして売られる。そういう大もとのやつを作ってるっていうことです。最近はオタク文化って訳じゃないですが、そういうのが認知されてきて、海外でも日本のアニメーションとかが認知されてきてる。それこそ、俺らが学生くらいの時から、食玩とかがブームになって、ちょっとフィギュアとかが認知され始めたりしましたよね。一般の人がコンビニで買ったりしてみたり。そのちょっと前くらいからスターウォーズのフィギュアとかもあったり、オタク文化からカルチャー寄りになったことがスタートしたことによって、フィギュアとか原型師っていうのがちょっとだけ認知され始めてきて、そこから10年、15年くらい…。
荒川  最近といえば最近ですよね?
山口  業界自体はだいぶ昔からあったんですけど、昔あった業界の人たちは金型屋さん。キン消しとかソフビとか。そもそも原型師っていうのがいた訳じゃなく、金型屋さんが原型を作ってたんですよね。生産するにあたって元がいる訳で、(簡単に言えば)印刷屋さんがデザインをした、みたいなもんです。
荒川  中村さんはご存知かと思うんですけど、昔のソフビって仕上がりに幅があるというか…。
山口  そうそう、怪獣のとかね。
川口  ソフビってなんですか?
MC  あー。そうか、分からないよねぇ。
山口  例えば、ウルトラマンとか怪獣とかで、中が空洞になってるちょっと柔らかいやつ。上半身と下半身がスポッと抜けるようなお風呂で使うようなおもちゃみたいなやつ。あれを総称してソフビ、ソフトビニールっていうの。
川口  なるほど。
荒川  あれも金型があるんですよ。その金型を作った人が、いわゆる職人さんなので、デザインの知識だったりクリエイティブな知識がそんなにない方が作ってるので、もとの「ウルトラマンの絵がこうですよ」っていうのをソフビにする金型にした時に、「あれ?これウルトラマンだったかな?」っていうのが起こり得た過去があったわけですよ。
山口  まぁ、元々は生産をするための営業ツールだったんだと思います。(当時は)紙の印刷するから、たぶん、このデザインやるよってノリでしょ?でも、今はそうはいかなくなった。
荒川  (当時の金型の職人さんは、おそらく)やらないといけなくてやってたってところもあったので、子供はそこを想像力でカバーしてたわけですよ。
山口  そこから、造形の技術がだんだん上がってきて、今はそうはいかない大変な事になってきてる。(苦笑)
荒川  たぶん、買い手がうるさくなってきてるんですよ。「こうじゃない」とか、ダメ出しみたいなのも出てきてるはずなんです。「もうちょっと実際のアニメだとこうなのにフィギュアだとこうなってるじゃないか」とか。(フィギュアを作るときの)独自解釈がいいか悪いかとか。それが逆に作家性みたいなのも出てきてて、「原型師の◯◯さんの作品はこれです」っていう最近はちょっとずつ出てきてる。
山口  そうですね。でも俺はなるべく作家性は出さないようにしてる意識があって、結局アニメだったら、ドラゴンボールなり、ワンピースなり、ガンダムなわけじゃないですか。それに俺の作家性はいらない。(笑)ルフィーを作ればいい。みんなの好きなルフィーを提示するべきで、俺のルフィーをみんなが見たいわけじゃない。作家というよりかは、自分の中の意識は職人かなぁ。まぁ人によるとは思いますけど。
荒川  原型師の世界にそれだけ幅というか深みが出てきたってことですよね。
山口  ちょっとずつですけど、多少(原型師が)認知されてきてるのかもしれないですね。海洋堂さんとか、よく名前は聞くじゃないですか。別にフィギュアとか好きじゃない興味ない人でも知ってるくらいになってきてるので。
荒川  そうですね。中村さんもご存知かもしれないですけど、海の生物のフィギュアとか…。
MC  そうですねー。そういうの大好きです。海洋堂大好きです。ガチャガチャの(おもちゃ)とかありますよね。あれはやっぱり子供は大好きだし、結構大人でも好きですよね。リアリティがあってよく作るなーっていつも思ってました。

MC  でも、さっきおっしゃってた「自分の作家性を出さないで、みんなの望むものを作ればいい」という考え方と、自分のオリジナリティっていうか、そういう分野のものを作る時もあるんですか?
山口  今はほとんどないですね。学生の時とか、始めの頃は多少興味があって、自分の作りたいオリジナルみたいなものを出したりしたことがあるんですけど、最近は自分のオリジナルとかはやったりしないですね。ただ、最近はちょっと興味が出てきて、自分のやりたいものを商売とは別で出してみたいなーっていうのは多少はありますね。
川口  何を作りたいですか?キャラものではなく?
山口  キャラものじゃなく、造形物ですね。ちょっとやってみたいなーと思うのが、日本の昔からある絵とか立体。彫刻とか仏像とか。日本のカタチ?日本の雲と例えば中国やアメリカの雲って、描かれてる絵によって形が違うと思うんですよ。日本の炎とアメリカのファイヤーパターンってやっぱり違うから、日本の絵とか日本のものを、日本の形で立体にして、それを商品になるかは分からないけど、そういう形は作ってみたい。やってみたいけど、それをやって「だから何?」ってことになっちゃうんですけどね。(苦笑)
川口  でも、個展とかだったらいいんじゃないですか?
山口  そうですね、自分でただ作って、人に評価してもらうとかは、興味は最近出てきました。
荒川  このラジオもそうなんですけど、デザイナーはそんなに表に出なくていい職業なわけですよ。でも、あえてここは、名前を出すとか、表に出ていく必要があるんじゃないかと思って。コミュニケーションとかもして、(中に)こもらないようにしたいなーと思ってラジオもやってるんです。原型師っていう職業の人も、個展をやってみたりとかすると、興味ある方がいらしゃると思うんですよ。製品は見れるけど、その元は中々見れないじゃないですか。だからそういうの興味あります。
山口  元々は原型師は裏方だから表に出るものじゃない、おこがましいっていう意識があって…。自分の名前で作品を作って大会に出るっていうのを断っていたんですが、そんな中で、最近、大会とかに出させてもらうようになって、多少認知してもらえうようになると、自分の全然関係ないところで、(SNSやネットなんかで)色んな声が聞けるようになって…。それはそれで、仕事とは別だけど楽しいなって思うし、お客さんの生の声が聞けたり、元々は、誰が作ってるか分からないから、自分の元に届く事がなかった声が届くようになるのは、楽しいんだなって思います。あとは、例えば業界の裾野というか、業界の下が育たない限り、業界は衰退すると思っているので、そういうことの一貫としては、原型師っていう職業の人がちょっと表に出るっていうのは多少は意味があるのかなーと思います。
荒川  めちゃめちゃ意味ありますよー。尚ちゃんも知らなかったもんね。ソフビって何ってところから始まって、原型師っていう職業を知って…。
川口  (原型師っていう職業を)広めたほうがいいと思います。
山口  ホントか?!(笑)
川口  でも、ホントに、幼い時って純粋に「将来の夢なんですか?」って聞かれて、原型師ってまず出てこないじゃないですか。でも、それはたぶん世の中の人が、職業としてケーキ屋さんとかパイロットとか、みんなが見ている側面の仕事しか知らないから、子供も将来の夢を語る時に言えないのであって…。でも、実際は日本の生産や消費を底で支えてるのは、職人さんとかそういうモノづくりをして作り上げてる人がいるから、大量生産できて商品ができてるわけだから、私は、最初に作ってる人とか職人さんっていうのは、すごく胸を張って表に出てきて欲しいと思います。(言葉がヘタで)すみません…わかります?
山口  わかる。伝わりましたよ。(笑)
荒川  日陰でヒソヒソやってきたわけじゃないけど、今まで出る必要がなかったし、出る場もなかったからね。造形王みたいなのも少なかったし、場がなかったっていうのが大きいんじゃないですかね?ワールドチャンピオンになった時も、もうちょっとメディアが取り上げてもいいんじゃないかって傍から見てたら思うんですけどね。
山口  やっぱりユーチューバーには勝てないよね。(笑)
荒川  もうちょっとこなれてくると、後世に残る技術っていうことで、目が向けられるといいなー思ってるんで、諦めないでやってもらえるといいなと思います。
川口  もしかしたら、何百年も先になったら、昔の伝統工芸士みたいに、フィギュアの造形師の人も、何百年後かには歴史の中に刻まれるかもしれない。
山口  それこそ、仏像を彫刻した人が今いたら、原型師だったかもしれない。
荒川  埴輪とか土偶も、そもそも、(その時代の)フィギュアなわけですよ。
山口  金剛力士像だって、(当時は)それを依頼するクライアントがいたわけで、オーダーがあって作ったわけでしょ?もしかしたら、カタチにするってことで言えば、今の俺たちと同じかもしれないよね、とは思いますね。ちょっと違うのかな?どうなんだろ?あの人達はもっと凄いことをしたような気もするけど…。

川口  ネットで拝見させてもらった(山口さんの)フィギュアすごく(作りが)細かったですよ。靴紐のピラってした所とか、タバコの燃えてるところの灰がちょっとずれてたり、立体物として、どこから見ても動きそうな感じがしました。
一同 (笑)
山口  ありがとうございます。(笑)アニメーションとか平面のものを立体にした時に、どういう説得力のあるものにできるかっていうそういうところは、俺がやりたかった部分ではあるから、今言ってくれたような事はすごくありがたい。嬉しいです。
荒川  1曲挟んで、2Dから3Dにするコツとかノウハウとか、もうちょっと聞きたいなと思います。
山口  それでは、僕が大学の時にやってたバンドで、だだっこパンチで「超人墓場2000」

MC  時刻は午後7時26分を回っております。今週の荒川デザイン・クリエイティブジャム。ゲストに株式会社アートプレスト、原型師の山口範友樹さんをお招きしております。只今の曲は、山口さんのセレクトでだだっこパンチ「超人墓場2000」でした。この番組は新たに、人とモノと文化のポータルポイント事業を展開するロジスティクスカンパニー、株式会社アンノウと、株式会社ツインズの提供でお送りいたします。
荒川  この、だだっこパンチは学生の時に組んでたバンドですか?
山口  そうですね。だだっこパンチはコミックバンドでアプローチはパンクみたいな感じです。楽しかったですけどねー。
荒川  山口君の学生時代の思い出って言うと、学祭の時のフィナーレで、多摩美の中ってグルグル回れるようになってるんですけど、僕の記憶が間違ってなければ、そこに、車の上にほぼ全裸の山口君がのって、練り歩くというか車で走るっていうのがすごく印象的で…。
一同  (笑)
山口  間違ってないねー。合ってます。(笑)
荒川  すごい盛り上がったんですよ。
山口  なんで裸になったのかなー?でも一回盛り上がると服着るタイミングがなくなって、収拾つかなくなって、そこを考えてなかったから、(車で)一周して、そのまま環八にでるっていう…。(笑)
一同  (笑)
MC  すごいなー。(笑)
山口  そんな事してました。そんな時にやってた曲です。(笑)

荒川  アニメーションとかキャラクターの平面の2次元から3次元にする時って指示書があるわけじゃないんですよね?想像して「こういう感じになってるんじゃないかな?」って自己解釈みたいなのはどこまでするんですか?
山口  それは場合によるんだけど、とりあえず指示書というか絵はある。正面の絵でこういうポーズのこういうサイズのフィギュアにしてほしいっていう…。場合によっては後ろから描いたりとか。あとは、アニメーションの設定資料というのがあって、どんなアニメも「このキャラクターはこういうふうなものです」っていう三面図とか表情とかの資料をもらって、その中でどういうふうに立体にするか…。ただ、基本的にはこっちの解釈を入れていかないと、場合によるんですけど、例えば黒い服を着ている人は(平面では)ほぼ真っ黒ベタで塗られてるけど、(服の)シワとかはこっちの解釈でしょ?そういうことはいっぱいあります。
荒川  素材感とかもこっちである程度選ぶの?
山口  俺はそういうのをやるのが自分が好きだから、素材感とかは自分で解釈して、このキャラクターがこの時に履いてるズボンは綿なのか、革なのか…、とかは、作者の人が意識して描いてればなんとなく読みとればいいんだけど、そうじゃない場合は想像してやります。そうすると、シワの深さとかが変わってくる。例えばセーター着てるシワと、ジャケットのシワっていうのは作り方が変わってくる。厚いか、薄いものなのかでシワの入り方が違ったりするので、これは薄い綿なんだなって思えば、薄い綿の時に出来るシワを作ったりすると、2次元のものが3次元になった時に、お客さんとかが納得してくれやすい。「洋服ってどこで縫われてるんだろう?」「何枚の布で出来てるんだろう?」「縫い合わせの位置ってどこなんだろう?」っていうのを意識して造形していくと、お客さんも納得してくれる。説得力のある造形を僕はしたくて…。でも、それをしないほうがいいキャラクターもあると思うわけ。例えば、自分達が想像できない洋服を着ている場合もあるじゃないですか。時代背景とかも、未来の話で、革とか布とかの話じゃないかもしれない。そういう時に勝手に綿の表現を入れたら違和感になると思うから、そういう時はもちろん考えます。人によるけど、俺のやってるやり方は、そういうことを表現していって、お客さんが評価してくれてるのかなーと思います。

荒川  実際作る時は、デジタルとアナログと2つあると思うんですけど、どっちからスタートして最終的にこうなるんですか?出来上がったものしか見たことないんですけど。
山口  最近は、デジタルで造形するっていうのが出来てきて、3Dプリンターとか3Dスキャナー、3Dモデリングとか、映画もほぼCGみたいになってたり…。今までは粘土でワックスっていうロウみたいなので原型を作ってくのが主流だったんだけど、10年くらい前から始まってここ2、3年の間でデジタルっていうのがすごく出てきて、3Dのソフトや3Dプリンタも安くなったり、安価になってきたんですね。俺らの学生の頃は、3Dのソフト1本入れるのに100万とか200万とかだったのが、今だったら数十万あれば入る。もう少し一般になってきて、それで造形するっていうのが主流になってきてて、今は(デジタルとアナログ)半分半分くらいだと思います。一応俺は、デジタルの造形も出来るように勉強したんで、どっちでも作れるようにしてて、その時ごとに、早くていいものができるほうを使います。デジタルで作ることにこだわってもいないし、アナログで作ることにもこだわってない。「この期間内に一番ベストな表現ができるものでやろう」って。ただ、最近自分のやり方で多いのは、まずデジタルである程度のボリュームとかバランスを出して、一回3Dプリンターで出力して、それに対して粘土とかパテで造形をたしていく。それの利点は、デジタルだと、例えば1体のフィギュアを作る際、「頭の形がもう少し大きいほうがカッコいいんだろうな」「小さい方がいいかな」とか、漫画とかアニメって手足とか末端が少し大きくデフォルメされてて、「もう少し小さい方がスマートでかっこよく見える」「もう少し大きかったら可愛く見える」とか、同じキャラクターでもどういう表現のフィギュアにしたいかで、多少幅があるんですね。その時に、デジタルだったら出来るんですよ。顔を作って110%にしたら110%のものが見れるじゃないですか。これを手で作ったら、ちょっと大きくしたいってなったら「コト」だからね。(笑)
一同  (笑)
荒川  なぜ最初にそのサイズ感でやらなかったのか…ってね。
山口  誰が言い出したんだー!ってね。(笑)それがデジタルだと簡単にできちゃうから、より良いものを作る為の検証ができる。だから、本当のベースのところは、デジタルでやっちゃって、サイズとかボリューム感が決まったら、それに手でシワとか表現しやすい所を入れていこうかな、っていう感じの作り方ですね。(作り方は)人によると思います。

荒川  車とかって最初、手でデザイン画を描いてCGで作って、その後クレイでやるじゃないですか。あれは最終的にはクレイだと思うんですけど、あのデジタルの単位より細かい単位でできるのがアナログなのかなーって思うんですよ。
山口  俺もそう思う。何か、結局のところ、まだアナログって凄いと思うんで。それこそ、あんな車みたいな工業製品なんて、フルデジタルでフィックスまでいくのが普通かなって思うんだけど、わざわざクレイを作るじゃない?(映画の)有名なピクサーだってクレイモデルっていうのがあって、CGで全部作ってもいいんだけど、ただやっぱり、人がアナログだからだと思うんだよね。人が手に触れるものは、画面の中のものではない。その時の質感だとか量感っていうのは、やっぱりアナログのものが、一番親しみやすいし感じやすいから、やっぱりアナログのほうがいいのかなって。デジタルでやって出力したものって、俺はまだ分かるんだよね。これデジタル(で作ったもの)なんだろうなって。それは、悪い意味で分かる気がする。アナログで作ったものはやっぱり良いものって見えるし、デジタルで作ったものは、やっぱり固いっていうか寂しさ、物足りなさはちょっと感じるかな。まぁ人によるとは思うけど…。アナログ素晴らしいよ。
荒川  階調が、デジタルよりアナログのほうが半端ない。色もそうだし、触感もそうだし、感覚が無限大にあって、アナログを大切にしながら、デザインもそうですけど、紙質とか形とかも気にしながらデザインするっていうのは重要だと思います。
山口  まぁ使いやすい時にデジタルを使えばいいですよね。検証とか。
荒川  トライ・アンド・エラーはしやすいし、シュミレーションもしやすいし。
山口  デザインもそうだよね。この文字をちょっと動かしたいってなっても、昔はアナログだったわけじゃん。出力してこうやって…。デジタルだったらコンマいくつ動かしてどこがベストかって探れるけど。それはやりやすくなったよね。最終的に決めるのは、アナログの自分の感受性だと思うけど。
荒川  ビフォアー・アフターもすぐできるしね。そろそろ曲にいきますか。
川口  それでは曲紹介させていただきます。BLUE ENCOUNTで「DAY×DAY」です。

MC  時刻は午後7時44分をまわりました。今週の荒川デザインクリエイティブ・ジャム。ゲストに原型師の山口範友樹さんをお招きしております。ただいまの曲は、BLUE ENCOUNTで「DAY×DAY」でした。この番組は、新たに、人とモノと文化のポータルポイント事業を展開するロジスティクスカンパニー、株式会社アンノウと、株式会社ツインズの提供でお送りしております。
荒川  ありがとうございます。いつも曲を選ぶ時、ゲストさんを想って曲選んでるんです。で、この曲は、(山口さんの)インタビュー記事で、「あと一週間あったら、まだまだクオリティアップに励む」みたいなインタビューを読んだので、「DAY×DAY」って曲も、一日一日っていう意味で、サビのところに「全身全霊懸けて あなたを守りぬくと決めた」っていうのがあって、これは人を想って言っているところなんですが、山口君だったら、造形とかキャラクターの表現を全身全霊懸けて日々やってるんだろうなー、姿勢はこうなんだろうなー、と思いを馳せてこの曲を選びました。
山口  ありがとうございます。まさにその通りです。(笑)

川口  あんまりフィギュアとかは詳しくないので、すごく素朴な質問なんですが、(フィギュアの)作り方を教えてください。(笑)
山口  ですよねー。(笑)ホントに、みんなそう思ってると思うんです。
川口  さっきアナログとデジタル(の方法)があったと思うんですが、デジタルはパソコンのソフトとかで作って3Dプリンタで出力したらモノとして出来るじゃないですか。アナログは(どうやって作るんですか)?
山口  アナログは、本当に作り方は人によるんだけど、一番分かりやすく説明すると、もはや粘土だね。
川口  最初にイラスト(デッサン)とかは描くんですか?
山口  最初にキャラクターのこういうポーズっていうイラストはもらえるから、後は図工と一緒だよね。粘土をこねてってヘラでキャラクターにしていく。大体サイズをそれにあわせて。
荒川  粘土でデッサンする感じ?
山口  そうそう!
荒川  デッサンも大体のものを描いて細かいところを描きあげていく。
山口  細かく言ったら、ブロックで大まかなサイズ感を粘土(スカルピーっていうオーブンで熱を加えると硬くなるもの)で、やってく。小学校の時とかに紙粘土、油粘土で作ってたようなことを只々突き詰めてやっていく。(笑)
荒川  さっき話の、(キャラクターの)繊細なタバコや靴紐の表現を(粘土で)やるわけですよ。
山口  だから、今デジタルがあるから、手で作ったものをデジタルのスキャナーでスキャンして、一回デジタルにも入れられる。
川口  すごーい!逆も出来るんですね。
山口  例えば、顔右半分作って、デジタルでスキャンして反転してコピペで両方作るってこともできる。本当に何やってもいいんだけど、アナログになると、粘土で只々地味に顔作って…ってやってると思ってもらえたら。
川口  ほぼ芸術家ですよね。
山口  うーん、彫刻家に似たようなものかも。

荒川  今新しいZERO STUDIOっていうプロジェクトをやってると聞いたんですが、その話を…。
山口  一応、所属がアートプレストっていう会社の中にいるんですけど、その中で、今まで造形部として原型(の仕事)を受ける部署を作ってたんですけど、いわゆる「受け」の仕事のイメージが強かったんですよ。色々もらえるお仕事に対してなるべくクオリティーの高い良いものを提示するっていうことをやってきたんだけど、ちょっと次のこともやってみたいな…と。例えば、こちらから、「僕たちはこういう造形とこういう技術があるので、何かやりませんか?」とか、企画を作って「こういうキャラクターでこういうことをやってみたい」。このキャラクターのこのサイズのこのポーズを作ってって言われるのが原型師(の仕事)だけど、「このキャラクターでこういうポーズでこういう表現ができるので、こういう商品作ってみませんか?」って提案とか企画とかをやってみたい。「受け」じゃなくて「発信」のほうに近づきたいなって。造形を作る技術を、フィギュアにはこだわってないから、この技術だとこんなこともできるっていうのをやってみたいなと思います。
荒川  少しフットワークの軽い部署を作るっていう事ですね?
山口  そうですね。もともと学校でデザイン科で勉強してたから、デザインにすごい興味があって、デザインって素晴らしくて、それって発しないとだめでしょ?だから、そっち(デザインの方向)に今の技術を近づけるような部署になりたいなっていう気持ちがちょっとあります。
荒川  来年くらいから本格始動ですか?
山口  もう本格始動したいんですけどね、今スタジオの内装やってます。(笑)ちょっとずつ発表していきますので、よろしくお願いします。

荒川  気づけばエンディングテーマが流れてきました。当番組のスポンサー、株式会社ツインズが毎月、「月刊ツイン」という雑誌を発行してるんですが、7月号がいよいよフルリニューアルです。編集長が安納道さんで、アートディレクターが僕です。
一同  (拍手)
荒川  6月25日発売で、テーマが「老舗に息づく物語」。栃木には100年以上の老舗のお店が結構あるので、そこを丁寧に特集しています。6月25日発売なので、ぜひご購入ください。読売新聞の最終土曜日に折り込まれる「ツインクル」。こちらもリニューアルになります。これは、今まで「月刊ツイン」をやってた黒川まどかさんが編集長になり、今までと違う軸足でタブロイド紙が展開されています。13号の特集が那須特集です。読売新聞6月23日に折り込まれますので、ぜひ見ていただきたいなと思います。次回のラジオの放送が7月7日、七夕です。19時から「傍らに映画を」第4回で、「ラ・ラ・ランド」について1時間喋り尽くします。
山口  七夕は関係ないんだ?(笑)
荒川  七夕の話もちゃんとします。(笑)それもお楽しみに!今夜も荒川デザイン・クリエイティブジャム第16回をお聴きいただきありがとうございました。中村さん、尚ちゃん、そしてゲストの山口君今夜はありがとうございました!荒川デザインの荒川サトシでした。
一同  ありがとうございましたー!(拍手)