2018.5.19

ARAKAWA DESIGN CREATIVE JAM

ARCHIVE #14

2018年5月5日のADCJ第14回は、第14回 ADCJ、ゲストに田中潔さんをお呼びして、ご自身のカメラマンの経験から感じた、米作りのクリエイティビティ。そして独自ブランドのNIPPA米、日本酒の新波に引き継がれるストーリーをお聞きしました。

MC  時刻は午後7時になりました。毎月第1、第3土曜日のこの時間は、荒川デザイン・クリエイティブジャムをお送りしております。今週も始まりましたー。
荒川  こんばんはー。よろしくお願いします!
一同  よろしくお願いしまーす。
荒川  荒川デザインの荒川サトシです。まず番組の紹介をしますね。荒川デザイン・クリエイティブジャムでは、「クリエイティブを声で届けたい」をテーマに、いろんなゲストさんをお呼びする回と、映画を紹介する「傍らに映画を」というレギュラー企画、月2回でやらせてもらっています。今回はゲストトーク回です。で、今回はアシスタントが久しぶりに復活しました。特別に…期間限定なんですけど。荒川デザインでデザイナーをやってます川口尚子さんです。
川口  川口尚子と申します。今日は横浜から来ました。(笑)よろしくお願いします。
荒川  毎回、質問やメッセージを募集してるんですが、ミヤラジアプリからメッセージを送っていただくか、メールで773@miyaradi.comにメッセージを送ってもらえると、番組中に読んだりご紹介させていただきます。また、メッセージに住所を書いて送っていただけると、番組のオリジナルステッカーをお送りします。

荒川  早速、今回のゲスト、新波代表の田中潔さんをお呼びしてます。よろしくお願いします。
田中  よろしくお願いします。
一同  (拍手)
荒川  お忙しい時期に来ていただいて、Facebookで色々拝見させていただいております。まずは紹介をしてもらいます。
川口  はい、それではご紹介させていただきます。本日のゲストの、新波米代表 田中潔さんです。栃木市新波地区で約400年続く農家の17代目で、東京で十数年間カメラマンとして働かれた後、実家の米づくりを受け継ぐために帰郷されました。地元から出る米ぬかや酒粕で作った有機肥料、大谷石の粉末などを使い、土地の味を引き出すことを追求されています。また、カフェや雑貨店でのお米の販売や、陶器市などのイベントに出店など、農業をおしゃれな仕事にすることを目指して、新たなチャレンジを続けていらっしゃいます。そして、栃木市の地域の魅力を掘り起こし、発信する活動にも参加されています。カメラマンとしての仕事も継続し、多方面で活躍していらっしゃいます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。
荒川  田中さんよろしくお願いします。ラジオは2回目?しゃべるのは得意ですか?
田中  2回目ですね。う〜ん、(しゃべるのは)あんまり得意ではないですけど…。

荒川  経歴にもありましたけど、カメラマンをされてて今はご実家の農業を継いでらっしゃるってことなんですけど、その経緯というかきっかけみたいなのをお聞きしたいなと思います。
田中  さっき説明にもありましたけど、実家が400年続く農家でして、家系図たどったら400年だったってだけなんですけど。
MC  400年!江戸時代?すごいなぁー。
田中  そうですね、江戸後期ですね。で、それだけ続いてる農家っていうのが(頭に)あったのはあったんですが、親父が作ってたと思ってたお米が、作業委託。土地はうちの土地なんですけど作業を人にお願いして作ってもらってる状態だったんです。自分の親が作ってない米を食べてたっていうことに気がついちゃって…。大変だから作業だけお願いするっていうのはよくある話なんですけど、その時(それを聞いた時)はショックで。自分のうちの米が自分のうちの米じゃないっていうところにちょっとビックリしちゃって、で、その時ちょうど写真をやっていて少し壁にあたった時期でもあって、実家の写真を撮るようになったんです。自分のオリジナリティを求めるのに、自分ちの生まれた環境みたいなのを撮っていくっていうのをちょっとやっていた時に初めて気がついたんですよ。それでちょっとあまりにもショックで、僕も悩んだ時期もあって、自由業だったんで、時間はある程度あったので、土日にやる農業くらいだったら出来るかなーって最初に手を出すようになったんです。
荒川  最初は知らなかったんですね?実家からお米が届けられて「美味しいな」って思って食べてたら、田んぼは自分の家の田んぼだけど、手を掛けた人がお父さんじゃなかったっていうことですよね?
田中  そうですね。何かこれがそのまま続くと、そのうち廃業になるんです。廃業じゃなかったとしても、そのうち米は買う可能性が出てくる。で、農家が米を買うっていう事にすごく違和感を感じて、せめて自分の家で食べる分は(自分で作りたい)…っていうのがあって、そんなに面積大きくないので、これぐらいなら出来るかなっていうので、(農業に)手を出していくようになりました。

荒川  ノウハウというか、田植えの技術みたいなものはどこから学ばれたんですか?
田中  一応、有機農業でやるっていうのを決めていたので、教えてくれるところがあって、一通りの体系的な事は勉強して。あとは、ずっと親父がやってた事なので、聞けば(情報が)出てくるわけです。
荒川  師匠みたいな感じですか?
田中  そうですね。それで、道具も一通りあったし、親父に聞けばできるし。
荒川  お父さんすごく喜んだんじゃないですか?息子が帰ってきて。
田中  どうですかね〜?そこはやっぱり言わなかったですよね。何にも言わないですね。やるならやる、やれば?みたいな感じで。
荒川  (農業の)大変さとかを(お父さんは)もしかしたら知っていて、単純に両手を挙げて喜べないっていう気持ちももしかしたらあるのかもしれないですねー。
田中  今思うと、有機農業でやるっていうのを許してくれたっていうか…。僕がやることに対して何にも(父は)言わなかったんです。やり方がどうとかっていう細かいところではぶつかったりしましたけど、「やる」っていう事に対して「やるな」とも言わないし。
荒川  お父さん自身は有機農法ではなかったんですか?一般的な方法で?
田中  そうですね。バリバリの高度経済成長の(時代の)人達なので。
荒川  そういう世代の方達からみたら有機(農法)の見え方ってどうなんですか?消費者から見たら有機(農法)はいいかなって思うんですけど。
田中  そうですね…、何ていうのかなぁ。農業って作ったら売らなきゃいけない。で、今まで親父たちがやってきた農業っていうのは農協が全部買い上げてくれるっていう仕組みだったんです。作りさえすればよかったんですけど、僕がやろうとしてることは、全部自分で売らなきゃいけないんです。親父たちはそこをやってこなかったので、僕がやろうとしてることは無謀にしか見えない。「作ったはいいけど売れるのか?」
川口  農協を介さないで、自分達で作って自分達で売られるんですか?
田中  そうです。そこが、親父たちにとっても未知だし…。
川口  そうですよね、売れるっていう保証がないですもんね。
田中  売れなかったらどうするんだ…みたいな。

荒川  尚ちゃん(川口)、お米ってこだわってますか?
川口  私、米大好きなんですよ。実家が滋賀なんですけど、昔実家が兼業農家をしていて、私が小さい頃は普通に米を作ってたんですね。なので、農業の大変さとかも、たぶん普通の人よりかはちょっとは分かるくらいです。今一番田植えとかで忙しい時期ですよね?品種によっても違うのかもしれないけど、関西と植える時期が違うのかな?滋賀だとちょうどゴールデンウィーク手前くらい(?)の時期に、代掻きやって(田んぼに)水入れて植えるっていうのをやっていたので、いつも春とか秋とかは、小さい頃でも遊びに行きたくても家が農業の仕事とかあって、全然遊びに連れて行ってもらえなかった思い出があってあんまりいい思い出がなかったんですよ。
田中  一緒です。(笑)ゴールデンウィークって何?みたいな感じですよね。
川口  そうそう、ちょうど一番忙しい時期なんですよね。
田中  全然ゴールデンじゃない。(笑)今となっては農業楽しいですけどね。
川口  でも、大人になってからは、田中さんがおっしゃてたみたいに、自分の家で採れた米を食べるのが当たり前っていう生活をちっちゃい頃からしてきたので、逆に結婚して自分で家庭を持つようになって、普通の人は米を買ってるっていうのを初めて実感して、私は(父から米をもらっているけど、農家じゃない人は)米を買っているんだっていう現実を知った時に、有り難さを感じたり、親が作ってるっていう生産者が分かる安心もあって、年をとってから愛着とか、消費者として農業の大切さとかも感じました。
田中  そうですよね、僕の正直、一回外に出ないと分からなかったです。僕ほんとは家出ですもん。写真やるって言った時。
荒川  え?それは何に反発してですか?
田中  親ですね。受験に失敗して、どこにも受からないんだったら農業やれって強制されそうだったんです。その時、農業が嫌で出ていったんで。
荒川  そこから(実家に)戻るって結構(大変じゃなかったですか)?
田中  そうですね、写真をやっていて、モノづくりっていうところでは、(写真も米づくりも)変わらないんですよね。僕、公務員の兄弟がいるんですけど、兄弟と話してるより親父と話してるほうが話が通じるっていうのがあって、やっぱりモノを作ってるから感覚的なところが合うんです。
荒川  じゃあ(お父さんを)ゲストに呼びたいですね。(笑)
田中  いやいや、大変ですよ。(笑)ダメですダメです。(笑)
荒川  僕がラジオで伝えたいのって、そういうクリエイティブな事が話せる人と話がしたいっていうのがあるんで、お父さんと話せる事もあるんじゃないかなって思います。
田中  どうなんですかねー。自然を相手にしてるっていう感覚だったりだとか、僕も写真をやってる時とかは、見えないモノに対して自分でシャッターを切っていく。何ていうのかな、見えるものを撮るんですけど、写すものは見えないものなんで、そこを信じてシャッターを切っていったりするので、そこはすごく似てるなーって思ったんです。
川口  確かに農業とかって、感覚的なところ大事ですよね。父とかが農業やってる時とかも、土の状態見たり、水の量とか、「何で分かるの?」って…。外から見てる人間(米を食べてる消費者)には、違いが分からないことも長年そういうのを体で体感して、自然と向き合ってやってるから分かることもあるのかなーって思います。
田中  そうですね、自然と向き合うっていうのが、世界の理解みたいなことだと思うんですよ。たぶん意識してやってないとは思いますけど。写真をやっている時も、何かしらそういう心理みたいなところに近づきたくて、やってたところがあって、農業をやっていても、やっばりそこなんですよね。見えないものに対して仮説を立ててアプローチをして検証して、でその検証が正しければ、自分がその世界に近づくっていう感覚でやってるんで、そういう意味で写真と農業って一緒って思ってるところがあります。

荒川  写真とお米でいうと、期間も違うじゃないですか。お米って一日ではできない。写真とは時間の付き合い方が変わったりしましたか?
田中  全然違いますよね。僕はあとどれくらいだろう…30回も(お米を)作れればバンバンザイですよね?
荒川  そういう計算になりますよね?
川口  年に一回の収穫ですもんね。
田中  シャッターを切るよりもっと少ないんで、一年一年をすごく(大事にいている)…。僕、田んぼ一枚ずつバラして変えたりしてるんですよ。
荒川  バラすっていうのは(どういう事ですか)?
田中  肥料とか作り方とかコンセプトとかを(田んぼごとに)全部変えたりとかしてやっていて、それが10枚あれば10年の蓄積と一緒なので。
荒川  10バリエーションを1年でやるってことなんですね?
田中  そうです。そうやらないと、20歳くらいからやってる人にはかなわない。
荒川  経験をそこで上乗せするしかない…。
田中  すごいめんどくさい…。
川口  ある意味、実験というか開発みたいなものですね。
田中  そうですね。
荒川  すげー。
田中  春先に計算したりするんですけど、ひと月くらいずっとやってたりします。
荒川  Facebookで肥料の計算をしてるっていう写真を見たんですけど、それもですか?
田中  そうですね。
川口  それって収穫の時に、10反あったら10反、(肥料や育て方を変えたことで)収穫量が変わったりするんですか?
田中  これがねー、わかんないんですよ。(苦笑)
川口  意外と肥料いっぱい変えてみたけど収穫高にあんまり影響なかったとか?(笑)
田中  そう、収穫に関係なかったり、なんて言うんですかね…。すごくコントロールしようとはしてるんですけど、それ以上に自然のほうが強い。なので、僕がやってる事ってちょっと手を添える程度の事なんです。「こっちですよ」みたいな感じの。完全に、こうやって立たせてやるっていう感じの話じゃないんです。その程度の事をやって遊んでる感じです。
荒川  今も稲を踏んでるっていうの(を見たんですけど)、あれはよくやる事なんですか?
田中  よく言われてる事なんですけど、(稲を踏んだら折れそうで)怖いじゃないですか。まぁ一回折るんですけど。
川口  植えてから踏むんですか?
田中  いや、育苗の段階で、箱の上から踏んでいくんです。そうしたら(稲が)強くなる。ストレスをかけてやると上に伸びなくなって下に根を張っていくっていう昔からある技術なんです。でも面倒くさいのでみんなやらない、大変なんで。でも、去年は失敗したんで…。
荒川  それは何がですか?
田中  温度のやり方をちょっと間違えてて、育苗の時に発芽が悪かった。そのへんもうちょっと詰めないといけないな、と思って、今年は少し育苗のほうに力を入れている感じです。

荒川  田植えの時期は、田中さんが「この時期にしよう」って計算して決めてるんですか?
田中  そうですね。ゴールデンウイーク前後でどの地域も(田植えが)始まるので。
川口  品種は何ですか?
田中  品種はコシヒカリです。あとは酒米入れてたり。
川口  酒米って?
荒川  お酒用のヤツです。このあと紹介する…。
川口  お酒になるためのお米は品種が違うんですね?なるほど。
荒川  コシヒカリ、この前イベントで食べることができて、すごいふわふわで甘みが強いなっていう印象でした。炊き方とかもあるんでしょうけど、フワッてしてる感じでした。
田中  粒がしっかり立ってる感じなんですかね?
MC  空気が中に入る感じなんですかね?
荒川  すごい美味しかったですよ。
川口  私の実家は日本晴だったんで、サラッとした感じのお米を食べ慣れてるんで、もっちりしたお米、コシヒカリ結構好きなんで食べてみたいです。
荒川  曲いきますか?
川口  一曲目はザ・ヴァーヴで、「ビター・スイート・シンフォニー」です。

MC  時刻は午後7時28分をまわっております。毎月第1、第3土曜日のこの7時台は荒川デザイン・クリエイティブジャムをお送りしております。ただいまえの曲はザ・ヴァーヴで、「ビター・スイート・シンフォニー」でした。この番組は株式会社ツインズと、新たに人とモノと文化のポータルポイント事業を展開するロジスティクスカンパニー、株式会社アンノウの提供でお送りいたします。
荒川  ありがとうございます。今日は新波米代表の田中潔さんをお呼びしています。

荒川  新波米ってあるんですけど、他と違う何かがあるんですか?
田中  新波米は基本的に、有機農業でやるっていうのは基本設計であるんですけど、それ以上に土地の味を表現したい、食べてもらいたい、土地を感じてもらいたいっていうので、(肥料に)地元で出る酒粕や米ぬか、大谷石を入れて、栃木らしさだったり新波らしさ、そういうものを表現して…。「土地の結晶」みたいなものじゃないですか、お米って。それをよく感じてもらうために(色々)してるっていうのが新波米の作り方です。
荒川 大谷石を入れるっていうのは(僕の感覚では)衝撃的だったんですが、石を入れたりするのって、他でもあるんですか?
田中  そうですね、鉱物系のものは(肥料に入れるのは)あったりしますね。
川口  ミネラル分ですか?
田中  そうですね。
荒川  じゃあ、大谷石は(肥料に混ぜるには)素材的にちょうどいいんですね。
田中  調べると、ケイ酸質(ガラス質のケイ酸なんですけど)、稲はケイ酸植物って言われているので、それが稲にはすごく良くて体を丈夫にするっていうのもあったり、ゼオライト質っていう土地の土の保肥力を上げてくれるっていう意味合いもあって入れています。大谷石が(肥料として)使えるんですけど、県外とかだとコストが上がっちゃって使えないんですよ。なので、栃木で使うっていう意味がすごくあるんです。
荒川  「栃木の新波米」っていうことなんですね!
田中  そうですね、どこのレイヤーで見るかによって、栃木(県)を背負うのか、新波(地区)を背負うのか、栃木市を背負うのかっていうのがあります。
荒川  新波っていうのは新波地区っていう名前ですよね?
田中  そうですね。新波米は、土地の、地名の名前をとって新波米にしています。
荒川  中々インパクトがあっていいですよね。
川口  田中さん以外にも新波米を作られてる方はいらっしゃるんですか?
田中  いないです。僕が言ってるだけなんです。
荒川  ブランドとして広げることって考えてるんですか?
田中  そうですね、やりたいって言ってくれる人がいるなら一緒にやりたいなと思うんですけど、一応定義としては、土地が新波地区ということ。それが一つのクオリティーの根拠になるので、それが違う土地で同じ作り方をしたら新波米か?って言われるとまたちょっと違うんで。新波地域であれば、川に挟まれてる土地なんで、昔から洪水が多くて、(同じ新波地区内だと)同じ様に出来上がってる土地なので、どこで作ってもだいたい特性が出る。
荒川  味に影響しますもんね。コシヒカリがメインですか?
田中  今のところそうですね。違う品種も考えてはいますけど…。

荒川  去年から日本酒を始められたそうなんですが、お米を作り、更に自分のお米で日本酒を作るっていうのはどういうきっかけ、思いがあったんですか?
田中  新波米を作った時も、自分の作ったものを食べたいっていうのがあって。更に僕、お酒が好きだったので、自分の作った米で出来た酒を飲みたいっていうのが動機であって。で、これは個人的な話になっちゃうんですけど、親父に飲ましてやりたかったんです。
荒川  いい話ですね。
一同  (笑)
田中  今のところ一番きれいな話ですね。(笑)
川口  お父さん喜ぶ話ですね。
荒川  最初に(お父さんに)飲ませてあげた時は(反応は)どうだったんですか?
田中  「これ美味いなー」って言ってもらったんです。嬉しかったですよねー。
荒川  親孝行ですねー!やりたいなぁ、そういう事。(笑)

荒川  日本酒を作るにあたって、お一人だと難しいところもあると思うんですが、どういうパートナーシップを結んで日本酒作りをされたんですか?
田中  酒屋さんの友達がいまして、お酒を作りたいということをまず相談したら蔵元さんを紹介してもらえて、それが、同じ栃木市の西方にある飯沼銘醸さんだったんです。そこで紹介してもらえて話をすることができて…。まず、酒米を作るっていうのが、ハードルとて高いんですね。
荒川  それは、コシヒカリとか違う、食べるお米とは違うノウハウがいるってことですか?
田中  そうですね。ちょっと生育の期間が違ったり、どこで肥料を欲しがったりとか…。あと、背が高いのでちょっと作りにくいというのがあって、その分価格は高いんですけど、まず作ったことない人が作らせてくれって言ってもまぁ難しいんですよ。「出来るの?」って言われちゃうのが一番最初なんで…。
荒川  最初はみんな(どんなことでも)そうなんですけどね。
田中  初めがないと作れないんですけど、そこをクリアして作らせてもらうことがまず出来て…。試験醸造じゃないんですけど、サンプルと言うか、一昨年に一回やったことがあって、いいのができて…。今年出来上がったものっていうのが、1タンク丸々買い戻しをして、自分で今年酒販免許をちゃんと取りまして…。
川口  免許がいるんですか?
田中  お酒を売るっていうのは免許がいるんです。免許を持ってないとどこかにお願いして売ることになるんですけど、それをしちゃうと今度は僕の方にはお金が落ちなくなっちゃう…。自分で売って自分でお金を得る。農業の六次化っていう農水省が推し進めてるヤツと同じなんですけど、自分でやるからには収入を上げないと意味がないので、そこを大事にして、大変だったんですけど酒販免許を通りまして。
荒川  酒販免許って難しいんですか?
田中  お役所の人聞いてると嫌ですけど、まぁ難しいですよね。手引書があるんですけど、まず読んでも分からないんです。説明聞いても正直分からないんです。(笑)
荒川  そういう作りになってるんですか?
田中  お役所の表記というか言葉というか…。こっちに表現かえてくださいって言われても僕らからしたら何が変わったのか意味が分からない。でも、こうじゃないと通らないんですって言われて…。
荒川  それをクリアして晴れて、酒販店になりました。(笑)
田中  たぶん、(米を)自分で作るってところまでは農家さんがやることが多いんですけど、自分で免許を取って販売っていうのはそんなにないんで。

荒川  それは6次産業っていうんですね。改めて6次産業って尚ちゃん知ってますか?
川口  なんとなく予習はしてきました。(笑)まず、第1次産業が農業や水産業、第2次産業が食品加工、第3次産業が流通・販売をされてる業種体なんですけれど、第1次産業の、農業されている方が販売や加工、流通も担うことで、簡単に言うと、第2次産業の2と第3次産業の3を掛けて、2×3=6っていうのをもじっての第6次産業です。合ってますか?
田中  合ってます。
川口  生産から販売までを一手に担うって事ですよね?
田中  そうです、そうです。
荒川  それを(田中さん)ご自身でやられてるって事ですよね?

荒川  日本酒の新波って2種類あるじゃないですか?袋吊りと、おり(おり酒)?これは違うんですか?よく大吟醸とかあるじゃないですか?それとはまた違うんですか?
田中  また別の表記のカテゴリーの話なんです。1タンク買い戻しをする時に、袋吊りっていう絞り方でやっていて、袋で吊るっていうのは、もろみを布の袋に入れて垂れてきたやつだけを集めて採る、すごく贅沢なお酒なんですけど、それをやると目が粗いので、白い濁った「おり」が下に貯まるんです。それと、残ったもろみをちょっと圧をかけて絞ったものを混ぜて「おり酒」として出てるんです。1タンクで袋吊りだけ採っちゃうと、残りが出ちゃうのでそれが「おり酒」なんですけど、それはそれで、また違った味わいで面白くて…。
荒川  この前いただいたのは、「おり酒」のほうで、とろみがある、サラッとしたいわゆる日本酒というよりとろみと甘みを感じて美味しかったです。今度、袋吊りもぜひ飲んでみたいです。(「おり酒」は)上澄みみたいな感じですか?
田中  そうですね、はい。
川口  一回(1タンク)でどれくらいお酒って作れるんですか?
田中  1200リッター弱くらいは出来るくらいです。一升瓶でいくと660本くらいっていう量です。
川口  すごい。お酒用の田んぼはいくつぐらい…?どれくらいの規模でされてるんですか?
田中  一応4反、40アールの田んぼを自分の新波用に充ててるんですけど、今年、有機農法で、新波米の作り方に準じて、新波のお酒の山田錦も作ろうかなと思っていて、そうすると収量がどうしても少なくなっちゃうんで、(田んぼ)2枚くらいをちょっと多めに用意して、それで1タンク仕込める量って考えています。

荒川  この辺りで曲いっていいですか?
MC  そうですね、この時期にぴったりの田中さんセレクトの曲ですね。
川口  それでは2曲目です。レミオロメンで「五月雨」

MC  時刻は午後7時46分をまわっております。今週の荒川デザイン・クリエイティブジャム。ただいまの曲は、レミオロメンで「五月雨」聴いていただきました。この番組は株式会社ツインズと、新たに人とモノと文化のポータルポイント事業を展開していきます、ロジスティクスカンパニー、株式会社アンノウの提供でお送りいたしております。
荒川  ありがとうございます。「五月雨」の解説をお願いします。
川口  「五月雨(さつきあめ)」なんですが、5月の雨と書いて「五月雨」という題名の曲でして、「さみだれ」とも読みますが、この「さ」は田植えの古語で、古来の田植えの時期(6月ごろ)を意味しています。また「みだれ」は「水垂れ」で雨の意味です。6月に新波米さんで企画されている「さなぶり」の「さ」も同様で、「早苗(さなえ)振る舞い」が「さなぶり」。ということで、この曲をセレクトさせていただきました。
荒川  「さ」が田植えの意味だったんですよ。「さなぶり」のイベントやられるじゃないですか。「さ」が田植えの意味で「さなぶり」で「早苗振る舞い」っていうことなのでちょうどいいなーと思って…。
田中  すごいセレクトですね!(笑)
荒川  「さなぶり」もそうなんですが、いろんな人に農業に興味を持ってもらう活動をされていると思うんですが、今後したい活動とか、時間が短いんですがお聞きしたいです。
田中  SNSを中心に情報発信してまして、なるべくライブで農業をどう見えるか、自分がどう感じて農業をやっているのか、っていうのを見せていきながら「農業って楽しいよ」っていうのが伝わっていけばいいなーと思っています。あと、イベントを開いたりして、田植え、稲刈り、直接植えたり収穫したりして、自分が食べてるものが何なのか分かってもらえるような、ちょっと食育みたいなこともやっています。あとは、儲かってる感じに見せるというか、儲かっていないと話にならないので、従来の農業ってちょっと「辛い」とか「苦しい」とか「苦労しました」っていうそこでお米を売っちゃうところがあって、田舎っぽさであったり…。それはもういらないんじゃないかなって、って思って。もうちょっと(イメージは)ライトに…。でも食べるものは美味しいっていう見せ方はちょっと考えていますね。
荒川  実際、田中さんをイベントとかで見ていて明るく振る舞っていて(農業をされてる姿に)憧れるなぁっていうのは思いますね。今度の「さなぶり」のイベントも娘連れて行くので、楽しみにしています。(笑)僕も小さい頃は田植えを手伝っていたので…。でっかい蛙とか捕まえて遊んでました。子どもに経験させていなかったんで、いい機会だなぁと思って、楽しみにしてます。

荒川  あっという間にエンディングなんですが、今度またお米が出来たら、また(ラジオに)お呼びして、「今年のお米がどうだった回」をやりたいですね。(笑)
MC  収穫祭を。
荒川  またお越しいただければなぁと思います。最後にスポンサーの告知があります。当番組のスポンサーの株式会社ツインズが毎月発行している月刊ツイン6月号が今度25日に発売されます。今度の特集は「麺特集」です。蕎麦の特集で、いろんなシチュエーションで行きたいお店が載っています。ぜひお買い求めください。サブ特集でうどんも載せているので、蕎麦もうどんも楽しめる内容になっています。25日コンビニ、書店でぜひお買い求めください。更に、読売新聞の最終土曜日に折り込まれる「ツインクル」というフリーペーパーが第13号が折り込まれます。「光と笑顔。灯して、照らして」と題して、テラスカンパニーさんをピックアップしてインタビューをしています。キャンドルクリエイターの飯島亮さんを中心に、継続就労支援事業っていうやられている活動を取り上げています。前号からの連載で「A tiny gift for you」やRestaurant KAKURAIさんのシェフのレシピなんかも載っています。栃木県で読売新聞を購読されている方、28日土曜日の新聞のチラシをあさって見つけてください。(笑)
次回の放送の予告です。次が6月2日 19時から。次回は映画の回です。「傍らに映画を」第3回をお送りします。次は、梅雨の時期にぴったりな「言の葉の庭」っていう映画と「おおかみこどもの雨と雪」です。どちらもアニメです。今回の放送もオフィシャルサイトで、文字に起こしたコンテンツを順次アップしますんで、読めるラジオということで楽しみにしていてください。いつか本になるといいなーという気持ちでやっております。今夜も荒川デザイン・クリエイティブジャム14回をお聴きいただいてありがとうございました。中村さんありがとうございました。尚ちゃんも初めてでありがとうございました。田中さん、お忙しい中ありがとうございました。
MC・川口田中  ありがとうございます。
川口  農業頑張ってください。
田中  ありがとうございます。
MC  がんばれー!
一同  ありがとうございましたー。(拍手)

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